朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
二階の事務所に上がろうと思ったら今度はキヨエさんにつかまるも、
無事に事務仕事をいくつか終え、福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
下に降りて行ったらまたキヨエさんにつかまる。
しかし、その対応も難なく終え、とうとう本来の昨日の勤務先である現場に行きます。
時刻は朝10時
10時といえば、グループホームの現場ではお茶とおやつの時間です。
私の顔をみつけるなり、「代わってくださ~い」とある女性スタッフの声がします。
なんだいきなり。と思って声がする方を見ると、
ひとみさんが二郎さんと将棋を指しています。
あ~将棋をしながら他の利用者さんたちも見守りしてたのか~ととっさに判断した私。
あ~(遅くなってごめんね)と思いながら、
将棋をしながら他の利用者さん達も見守りできる位置に座る。
将棋の盤面はまだ序盤。
しかし、飛車が一歩も動いていない王のすぐ上にある。
そして相手の二郎さんの飛車もその直線上にある。
なんということでしょう。。。
中飛車VS中飛車です。
幾度もの勝負を私とは重ねてきた二郎さん。
しかし、このような打ち方は初めてです。
相手が変わればこうまでも変わるものなのか。
私は驚愕しました。
しかも、局面は二郎さんの持ち駒がひとつ有利。
これは、まずい。
不利だ。
とっさに判断した私は、飛車を人差し指で押しながら
ひとみさんに文句をつけました。
「なんでこったどごに飛車おぐんづや~」(この下手くそが)
「こんど、わぁどやるが?」
「こてんぱんにしてけら」
それをそばで見ていた男性スタッフはなぜか大笑いしています。
ひとみさんもえへらえへらと私が何をしたっていうのよ。というような顔をしながら
笑っています。
二郎さんだけが真剣な顔つきです。
私はひとみさんに再度同じ文句をつけながら、最初に指す一手を考えていました。
このまま普通に指していては負けるのはあきらかです。
一手目を指しようがないのです。
しょうがないので私は飛車を捨てて金を取りに行き、角と金で勝負をすることに決めました。
定跡を外した打ち手をすることにより、相手を混乱させ、相手のミスを誘う戦法です。
二郎さんは必ずどこかでミスをします。
そこを見逃さなければ勝てると踏んだのです。
時刻は朝10時10分
他の利用者さんの皆さんはおやつとお茶を飲み終えました。
将棋盤を通した二郎さんと私の戦いはまだ始まったばかりです。
続く・・・