K夫妻のその後。6

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こりゃもう交番に連れていくしかないな。
そう思いながら僕は入りやすそうな交番を探します。

とりあえず筒井交番に車を走らせました。
交番と反対側の車線に車を停め、交番の中を観察します。

またしても若い男性がいます。
警察官となにやら立ち話をしています。

警察官のうちの1人がこちらに目を向けています。
どうみても不審者だよな。

ここもだめだ。
私は車を発進しました。

この間、奥様はずっと嫁の悪口を言っています。
なんでこんなことするんだとか。
嫁を家からだすだとか。
まったく迷惑かけたことないのにとか。
60にもなる女が仕事で出張ってどうゆうことだとか。
私は嫁に仕事の話は一切聞いたことがないとか。

本当はお嫁さんはまったく悪くなく、ご夫婦のためを思って
したことなのですが、当の本人たちが認知症だということに気づいていないので
話がややこしくなってしまうのです。

奥様は「おじいちゃんは最近物忘れが進んでいる」と言います。
「私も少し物忘れがある」と。

いやいや、物忘れどころか1分前のことも忘れてしまう。
重度の認知症なのです。
お嫁さんはよくこのお二人を(まして仕事をしながら)診ていたものです。

私は郊外にある交番に車を走らせることにしました。
郊外の交番なら暇だろうと思ったからです。
暇な交番ならこの二人の相手も優しくしてくれるだろうと。
いざとなったら私の名刺を出せばいいと。

空港の方へ向かって車を走らせます。
交番はすぐにみつかりました。
ところが真っ暗です。

パトカーの横に車を停めて私は言いました。
私 「〇〇さん。交番ももうしまってるよ」
奥様「あら~」
私 「パトカーはあるけども・・・」
奥様「あら~」
私 「もう夜11時になるよ」
奥様「あ~」
(かなり疲れてきています)
私 「今日はうちに泊まっていってよ」
奥様「そうだね~。そうさせていただこうかしら」

今度は確信に満ちています。
今晩はこれで終わりだ。
時刻は夜11時前です。

私は再度グループホームに向かって車を走らせます。
さっきグループホームに行ってからまだ30分ほどしかたっていません。

今度はもう「帰るよ」とはLINEしません。
あの二人のスタッフに寒い思いをさせてまで、
外で待たせる必要はもうないからです。

END


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