K夫妻のその後。2

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帰宅欲求の強いK夫婦。
家のカギが開いていないので合鍵を作ろうとジャスコのカギ屋さんへ行くも
出張はしていないと断られてしまう。。。
とりあえずトイレに行った奥様。

奥様がトイレを出て来たので、来た道を戻ろうとすると、
目の前に今度はアイスクリーム屋さんがありました。

私 「アイスクリーム食べる?」
奥さま「食べようか」
奥さま「でも、わたしお金もってないの」
私 「私が持ってるから大丈夫ですよ」
奥さま「あら、悪いわねぇ。あとで〇〇子さん(嫁の名前)からもらってちょうだい」
私 「わかりました」

キッズサイズを2つ頼み、ベンチで休むことにしました。

奥さん「ところであなたの名刺もらったっけ?」
私 「はい。先ほど渡しました」

噴水の前
私の名刺を確認する奥さん

アイスを食べ終わり、少し休んだところで車へ戻ることにしました。

そして再度ご自宅へ帰る。と言われたのでご自宅へ行きます。
家を過ぎた辺りで車を停め、カギがかかってるかどうか確認して来ますねと
車を降り、確認したふりをして車に乗り「鍵がかかってた」と伝えます。

そしたら、今度は、
広州やってるかしら?広州で嫁が帰ってくるのを待ってる。
と奥様が言い出しました。
広州とは近所の中華料理屋のことです。
私のおすすめは担々麺です。

私 「〇〇さん、なんか食べるの?」
奥さま「わたし中華そば食べる」
奥さま「でも、わたしお金もってないの」
私 「私が持ってるから大丈夫ですよ」
奥さま「あら、悪いわねぇ。あとで〇〇子さん(嫁の名前)からもらってちょうだい」
私 「わかりました」

なんということでしょう。。。
ちなみに二人とも2、3時間前に晩御飯を食べています。

しかも、奥様はジャスコでジュースを飲んでアイスも食べています。
まぁお腹一杯になって残してしまってもいいか!

ということで、さっそく

広州1

 

 

旦那様は何も食べません。
酒をすすめましたが、酒も飲みません。
そうとう腰が痛そうです。

奥様はペロッとラーメンを食べ終わりました。
ちなみに私もいつも担々麺しか食べていなかったので
同じものを頼んで食べてみました。
うまかったです。

ちなみに私も晩御飯を1時間前に食べていました。
そして奥様と一緒にジャスコでジュースを飲んでアイスを食べて、
今広州でこうしてラーメンを食べています。

やせるわけがありません。

なんということでしょう。。。

続く。


K夫妻のその後。1

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みなさん、こんにちは。
久しぶりの野球で筋肉痛の鈴木です。

おとといの夜勤の日のことです。
夕方6時半頃でしょうか。

K御夫妻の帰宅欲求がまた高まってしまいました。
女性職員が車で乗せていくと言っても、
「あなたではダメだ」と一蹴されます。
タクシーを呼んでくれと。
そして、暑いから外で待っていると外に出てしまいました。

仕方がないので、本来は夜勤で現場にいなくてはいけないはずの私が
車を出すことにしました。
ひとみさんにとりあえず夜勤業務を代わってもらいます。

タクシーのふりをして工藤御夫妻の前に車をつけます。
お二人を乗せてさっそく自宅へ。
自宅を通り越したところで車を停め、
カギが開いてるかどうか確認してくるね。と
車を降ります。

確認したふりをして、再度車に乗り込み、
「鍵がかかってた」と言います。

じゃあ「ジャスコの合鍵屋に行ってください」と奥様。
かしこまりました。と私。

すぐ近くのジャスコ(イオン)へ行きます。

ジャスコに入るりうさんジャスコへ到着した奥さん

腰が悪いため歩くのが遅い旦那さんを私にまかせて足早に歩きます。

旦那さんは入口にたどり着くのもやっとで、もう腰が痛いからダメだと言い出しました。
入口のすぐそばにあったジュース屋さんの前のベンチで休みます。
そしておいしいジュースを飲みました。

りうさんが車いすを借りに行くと言い出したので、私が代わりに車いすを借りに行きました。
帰ってきてみると、ベンチに奥さんがいません。
少し慌てましたが、すぐに発見しました。

 

どうやら鍵屋さんへの道を尋ねているようです。
旦那さんは本当に腰が痛そうです。

カギ屋さんへの道のりはまだ遠いです。
旦那さんを車いすに乗せて歩き出します。

途中で時計屋を発見したので奥さんに革バンドを直してもらったら
と促します。
奥さんの時計の革バンドが少し壊れていたのです。

その時計屋は修理はしていないのか、新しい革バンドを4つみせられました。
値段は4000円くらい。
お金を持っていない奥さんはすぐにあきらめました。

そして再度カギ屋さんへと歩を進めます。

カギやにはいるりうさん

とうとう鍵屋さんに到着しました。

ところが、、、
「うちは出張はしてないよ」と店主に一蹴されてしまいました。

あきらめの早い奥さんは、来た道を戻り始めます。
そしてトイレに行きたいと言い出しました。

ちょうど目の前にトイレがありました。

トイレに入るりうさん
トイレに入る奥さん

それを待つ旦那さん
それを待つ旦那さん

なんということでしょう。。。

続く。。。


久しぶりの日勤です。10

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ここら辺で一息入れて、話を脇道にそらさせてください。
久しぶりの日勤です。についてブログを書いていたら、
お昼までのところでNO.10にもなってしまって、疲れてきました。

今回は業界の内情をみなさんにお伝えしておきたいと思います。

今度うちに入る新しい利用者さんは他社が経営している住宅型有料老人ホームに現在入居されています。
そこを退去してうちのグループホームに入るにはもちろんわけがあります。

この方には担当のケアマネージャーさんがついています。
この方のご家族はケアマネージャーさんに相談したんです。

今入っているところ(施設)は何もしてくれない。って。
何もしてくれないといっても本当に何もしてくれないわけではありません。
食事は提供してくれますし、寝床(個室)も用意してくれています。

必要なら訪問介護サービスを使って入浴も通院も掃除も買い物も手伝ってくれます。
でも、でも、それだけなのです。

え?
それだけで充分だろ。って?

いやいや、この方は認知症なのです。
(ちなみに認知症でない方はグループホームには入れません)
認知症の方にはもっと多種多様なケアが必要なのです。

同じ要介護高齢者でも認知症がある方とない方では決定的な違いがあります。
誤解を恐れずにそれを一言で言いきります。

それは、
認知症の方は不安が強い(もちろん全ての方がというわけではありません)
ということです。

そりゃそうですよね~
たった30秒前に起きたことを忘れてしまうんですもの。

想像してみてください。
自分がもしそのような立場に置かれたらどうなるか?
精神を保つことができるか?
己の存在、自己存在を確立できるか?

怖いですね~
恐ろしいですよね~

だからこそその不安を払拭する作業が必要なのです。
訪問介護サービスだけではそれができません。
主に必要な最低限度の介護サービスを想定して制度設計されているからです。

このようなことを踏まえて先ほどの新しい入居者さんのご家族の声を解釈してみましょう。

「今いるところ(施設)は何もしてくれない」

これは介護サービスはしてくれるけど、認知症の利用者さんに対する心のケアまではしてくれない。
ということを表しています。

そこでこの担当ケアマネさんは考えました。
「そうだ!グループホームにしよう!」

ナイスアイディアです。

「グループホームといえばのじり苑だ」

たいていのケアマネさんはつきあいのあるひいきにしている施設があります。

「のじり苑に電話してみよう」

プルルル・・・プルルル・・・

「はい。のじり苑です」

その電話にでたのはたまたま私でした。
(ちなみに普段私は電話にでることはありません。たまたまです。夜遅かったのです)

「〇〇(ケアマネ事業所の名前)の〇田です。今そちらは空いてますか?」

「空いてます」と私。

「すぐに入れますか?」と担当ケアマネ

「はい。入れます」と私(本心は人手不足で大変なんだけど、ま、いざとなれば自分の休みを削ればなんとかなるか)

「一度、見学に行ってもいいですか?」と担当ケアマネ

「はい。どうぞ」と私。

なんということでしょう。。。
このケアマネさんは新米だったのです。いや、新人ケアマネだったのです。

なぜ彼女がうちに電話してきたのかは知りません。
聞いてもいません。

その事業所とは古くからのつきあいなので、きっと周りの同僚ケアマネからでも
うちの評判を聞いたのでしょう。

後日、その新米ケアマネさんはうちに見学にいらしたそうです。
私は不在だったためお会いしていません。

そして、無事にうちを気に入ってくださり、この利用者さんを紹介してくれました。
この利用者さんは強い徘徊癖があるそうです。
勝手に他の利用者さんの部屋に入って寝ていたり、テレビを見ていたりして度々クレームがあがるそうです。
今いる施設ではそれに対応できていない。

いや、そもそも対応するつもりもない。
そりゃそうでしょう。
人手が足りないんですから。
金にもならない仕事をわざわざする必要もない。

うちは違います。
金にならなくてもやるときは自腹を切ってでもやるし、
人手が足りないんだったら入居者数を減らします。

事故で入居者さんの命を落としたりしたらそれこそ大変じゃないですか。
テレビで謝罪会見しなきゃいけなくなるんですよ。

恥です。

日本は恥の文化です。

何を書きたいのかわからなくなってきました。

要は恥をとるか金をとるか。

いや、プライドをとるか恥をかくか。か・・・

いや、信用をとるか金をとるか。か?

まぁ、どっちでもいいや。

美意識の問題でしょ。
美意識の!!

眠くなってきました。

続く。。。


久しぶりの日勤です。9

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前回までのあらすじ・・・

朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
キヨエさんにつかまるも事務仕事をいくつか終え、
福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
またキヨエさんにつかまるも、
とうとう現場にたどりつき、二郎さんと将棋。
その後昼飯。そして往診。

時刻は昼の12時半。

やっとばたばたとした午前中も終わり、緩やかな午後が始まります。
部屋に入って昼寝をする利用者もいるため、職員も順番にお昼休みを取ります。

私は基本的にはというか、まったく昼休みというものを取りません。
休むほど働いていないからです。

リビングが静かになり、場が静けさを持ったころ、
それを打ち破る音楽をばかひとみがかけました。

演歌です。
年寄りは皆演歌が好きだと思っているのです。
まったく画一的なケアです。
私はこうゆうのが大嫌いなのです。

私はその音がはやくやめと思っていたら電話が鳴りました。
電話をでるためにばかひとみは音楽のボリュームを下げました。

そしてそのボリュームが上がることは二度とありませんでした。
たぶん忘れているのでしょう。

静けさを取り戻した私は、新しく入る入居者さんのフェイスシートに
目を通すことにしました。

フェイスシートとは、利用者さんの「氏名、年齢、性別、家族構成、健康状態」など、
基本データをまとめた用紙のことです。
「この利用者さんはどんな人か」を知る書類です。

事細かに趣味や生い立ち、生活歴、習慣、身体的特徴なども書かれています。
どこまで身体介護が必要か、徘徊はあるか、トイレは自分で行けるのか、
食事の好みは?などなど

隅から隅まで一字一句目を通せば、その人となりがそれなりにイメージできます。

その新しくうちに入る利用者さんは現在他の会社がやっている
住宅型有料老人ホームに入居されています。

住宅型有料老人ホームは介護保険施設ではないので、介護サービスを提供する義務はなく、
介護が必要な方には訪問介護サービスを利用させることが一般的です。
そのために必要なケアプランを担当のケアマネージャーが毎月作っています。

ここらへんは制度のひずみというか、一般の方々が理解に苦しむところです。

介護施設は約10種類もあるのです。

え~!?

という声が聞こえそうです。

何が違うの?って?

ほとんど違いはありません。

続く。


久しぶりの日勤です。8

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前回までのあらすじ・・・

朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
キヨエさんにつかまるも事務仕事をいくつか終え、
福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
またキヨエさんにつかまるも、
とうとう現場にたどりつき、二郎さんと将棋。
1時間を超える熱戦の末、勝負を終えた私。
ふと我に返り、往診の先生がまだ来てないことに気づく。
その一方でサタさんが薬がないと訴え始めている。
その薬を買いに行くと決めた我々。
昼飯を食べ始める我々。
そこに玄関のチャイムがなる・・・

「ピンポーン」

「あ!やっと来た!!」

つい大きい声をだしてしまう私。

下を向きながら入ってくる先生。

「ご苦労様で~す」

スリッパを準備しにかかる我々。

さっそく往診の始まりです。

ひとみさんは往診の先生と看護師と一緒にひとりひとりの利用者さんに付き添います。
あのばかひとみの目つきが一瞬に介護職人のするどい目に変わります。

私とサタさんは気にせずに黙々と焼きそばをたいらげます。
蛯名さん(調理師)が私に温めたスープを持ってきてくれました。
(私のお盆にはおにぎりだけでなくスープもなかったのです)

「ありがとう」

サタさんのスープはもうきっと冷めています。

介護職人のひとみさんは昼飯も食べずに往診に付き添っています。

それを横目にみながら、私はあっという間に昼飯を食べ終わります。
そして、既に食べ終わっている利用者様の食事摂取量をチェックし始めました。

食事摂取量のチェックとは、
主食、副食、汁物、飲み物(お茶)を各利用者さんたちがどの程度食したかを
100%を完食として細かく記録に残していくことです。

これを記録しておくことにより24時間で利用者様がどのくらいの水分を補給しているかの
確認ができます。

水分摂取量は一日1000CCを超えるように気を配ります。
夏も近づいているので、脱水症状が起きないように水分摂取量は特に注意が必要です。

一通りの方の往診が終わり、とうとうサタさんのところに先生が来てくれました。
サタさんはまだ食事中です。
看護師がバイタルを計り、先生が聴診器で彼女の体内の音を聞きます。

サタさん「ふつうですか?」

 先生 「はい。ふつうですね。元気です」

サタさん「先生の病院にいつでも行くがらな」

 先生 「来なくても大丈夫ですよ」

サタさん「・・・」

 先生 「元気なうちは来なくてもいいです。悪くなったら来てください」

サタさん「あ~」

あっという間の往診でした。

先生がいなくなってからご飯の続きをし始めたサタさんが言いました。

「あの医者、どごの病院の医者だ」

私「・・・」
サタさんの隣で食事をしていた男性職員が言いました。
「〇〇病院だよ!」

サタさん「〇〇病院?」「なんだそれ?」

なんということでしょう。。。

時刻は昼の12時半です。

続く。


久しぶりの日勤です。7

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前回までのあらすじ・・・

朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
キヨエさんにつかまるも事務仕事をいくつか終え、
福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
またキヨエさんにつかまるも、
とうとう現場にたどりつき、二郎さんと将棋。
1時間を超える熱戦の末、勝負を終えた私。
ふと我に返り、往診の先生がまだ来てないことに気づく。

時刻は11時40分
ふと気づいたら目の前でひとみさんが電話をしています。
話している内容から推測するに、往診がまだ来てないんだけどと病院に
電話をしているようです。

おいおい、いらぬことをするなぜよ。
あっちは天下の大病院ぜよ?
天下の医者様だぜ?

私の心の声など届かぬ彼女は電話を切るなり私に言いました。
「前のところが押していて遅れているそうです」

・・・んなこと聞かんでもわかるわい。
心の中でそう思いながらも、私は「あ~」とだけ発し、
昼飯を食うことにしました。
と思ったら、まだ準備ができていませんでした。

私の隣にはなぜかサタさんがいました。
朝の薬の件の説明を私に話しにきてくれたようです。(1話参照)
なにやらまだ問題が解決してなかったようなのです。

ひとみさんが私に言いました。
「須郷さんに薬を買いに行ってもらいます」(須郷さんは運転手兼用務員です)
続けてひとみさんが私に言いました。
「このサタさんの状態のままじゃ夜勤者が大変になってしまい、かわいそうなので」

彼女が言いたいことはこうゆうことです。
サタさんは朝から漢方薬がないと職員たちに訴えている。
もう昼だ。あれから3時間以上たつ。
サタさんはその薬にとても強い執着と愛着をもっていらっしゃるので
この訴えはたぶん夜まで続くだろう。
今は昼間だからスタッフが大勢いてこのサタさんの訴えを聞いていられるが、
夜は夜勤者一人になる。夜勤者は一人でやらなきゃいけないことがたくさんあるので
サタさん一人にかまっていられない。
このままではサタさんは夜も寝ないで訴え続けるかもしれない。
ならば今のうちにサタさんが求めているその薬を用意すればいい。
ということなのです。

なんてやさしいのでしょう。。。
私は「うん。うん。」とその意見に同意しました。

時刻は12時をまわりました。
私はサタさんの隣で昼食の焼きそばを食べ始めました。
サタさんも焼きそばとおにぎりを食べていました。
サタさんは言いました。
「このおにぎりうめぇな」
その小さな独り言は、近くにいた蛯名さん(調理員)にたぶん届きました。

私も言おうとしました。「おにぎりおいしい?」
しかし、その言葉は発せずに飲み込みました。
なぜならサタさんは耳がかなり遠いので、どうせ聞こえないだろうと思ったからです。

そして、私もおにぎりを食べようと思ったら、
私のお盆にはおにぎりがありませんでした。
「あ~、利用者にだけおにぎりがつくんだ~」

近くにいた職員が気を聞かせて言いました。
「おにぎり持ってきますか?」

私は言いました。
「いや、いらない」
サタさんがせっかくおいしいと言ってくれたおにぎりを
もし私が食べて、おいしいと言えなかったら、
蛯名さんに申し訳ないと思ったからです。

時刻は12時10分

玄関のチャイムがなりました。

続く。。。。


久しぶりの日勤です。6

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前回までのあらすじ・・・

朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
キヨエさんにつかまるも事務仕事をいくつか終え、
福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
またキヨエさんにつかまるも、
とうとう現場にたどりつき、将棋。相手は二郎さん。
不利な形勢から逆転に転じかけようとしているときにばかひとみに
ばかなことを言われて腹をたてつつも将棋の勝負は結末を迎えつつある。

はたして勝負の行方は・・・

時刻は朝11時13分

とうとう勝負が終わる時が来ました。

二郎さんの「まいりました」の声。
私の勝ちです。

誰もみていませんでした。

我々は「ありがとうございました」と
お互いの労をねぎらい、
またお互いの力を認め合い、
「また今度ね」と言葉を残し、
私は席を立ちました。

私は我に返り、現場の仕事に戻ります。
といっても特にやることはなさそうです。
ひとみさんが全部ひとりでやってしまっているからです。

時刻は11時20分

「あれ?往診まだ来ないの?」ひとみさんに声をかけます。
「はい~」(ちょっと遅れてますね~)とひとみさんの声。

そうなんです。
往診の日だったのです。

往診の日とは提携している病院の医者と看護師が月に1回、
我がグループホームに来て、利用者さんたちの健康チェックを
してくれる日のことです。

「飯食う時間になってまるべな~」と私
「そうなんですよ~」とひとみさん

と言いながらも私どもはその提携病院のおかげで飯を食わせてもらっていると言っても
過言ではないほど、いろいろとお世話になっているのです。

入居者さんを紹介していただいたり、入居者さんが入院したり、
薬を処方していただいたり、薬を作ってくれたり、
利用者さんの状態が悪くなったときは、急にかけつけてくれたり、
医療的なことでわからないことや確認したいことがあれば、
電話を一本すればいろいろと教えてくれるし、

開設以来13年のつきあいのある大病院様です。
足を向けては寝られません。

まして「おせんだね~」などとは言ってはいけません。

時刻は11時半を過ぎました。

続く・・・


久しぶりの日勤です。5

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前回までのあらすじ・・・

朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
二階の事務所に上がろうと思ったら今度はキヨエさんにつかまるも、
無事に事務仕事をいくつか終え、福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
下に降りて行ったらまたキヨエさんにつかまるも、
とうとう現場にたどりつきます。
最初に待っていた仕事は将棋の代打ち。相手は二郎さん。
しかも形勢はかなり不利。

はたして勝負の行方は・・・・

しばらくの間、両者一歩も譲らぬ均衡状態が続きます。
開始30分が経過したあたりでしょうか(将棋中は時計はみていません)
二郎さんがとうとうミスをしました。

私に飛車角両取りを桂馬でされてしまったのです。
二郎さんは飛車を逃がします。
私は角をいただきます。

これで二郎さんは飛車が二枚。
私は角が二枚。
これで五分五分です。

ここまで持ってくるのに30分も使ってしまいました。
すべてはばかひとみのせいです。

しかし、ここからが本当の私と二郎さんとのいつもの勝負です。
それからも両者一歩も譲らぬ状態がさらに30分続きます。
しかし、確実に一手一手と局面は終盤に近づいていきます。

開始後1時間が経過した頃のことです。

お互いどっちが先に詰ませることができるかと、
他をよせつけない緊迫した真剣な空気が流れている、
まさにそのときに、、、

我々のそばを通りかかった空気を読めないあるひとりの女が声をかけてきました。
ばかひとみです。

ひとみ「何回目ですか~?」
 私 「一回目だね!!」(誰のせいでこうなったとおもっちゅんずや!!)

一蹴です。

そばでそれをみていた男性職員が大笑いしました。

ばかひとみはえへらえへらと笑みを浮かべながら去っていきました。

時刻は朝11時を過ぎました。

続く・・・


久しぶりの日勤です。4

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朝からサタさんにつかまり、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
二階の事務所に上がろうと思ったら今度はキヨエさんにつかまるも、
無事に事務仕事をいくつか終え、福祉タクシー事業の担当者と打ち合わせをし、
下に降りて行ったらまたキヨエさんにつかまる。
しかし、その対応も難なく終え、とうとう本来の昨日の勤務先である現場に行きます。

時刻は朝10時
10時といえば、グループホームの現場ではお茶とおやつの時間です。

私の顔をみつけるなり、「代わってくださ~い」とある女性スタッフの声がします。
なんだいきなり。と思って声がする方を見ると、
ひとみさんが二郎さんと将棋を指しています。

あ~将棋をしながら他の利用者さんたちも見守りしてたのか~ととっさに判断した私。
あ~(遅くなってごめんね)と思いながら、
将棋をしながら他の利用者さん達も見守りできる位置に座る。

将棋の盤面はまだ序盤。
しかし、飛車が一歩も動いていない王のすぐ上にある。
そして相手の二郎さんの飛車もその直線上にある。

なんということでしょう。。。
中飛車VS中飛車です。

幾度もの勝負を私とは重ねてきた二郎さん。
しかし、このような打ち方は初めてです。

相手が変わればこうまでも変わるものなのか。
私は驚愕しました。

しかも、局面は二郎さんの持ち駒がひとつ有利。
これは、まずい。
不利だ。
とっさに判断した私は、飛車を人差し指で押しながら
ひとみさんに文句をつけました。

「なんでこったどごに飛車おぐんづや~」(この下手くそが)
「こんど、わぁどやるが?」
「こてんぱんにしてけら」

それをそばで見ていた男性スタッフはなぜか大笑いしています。
ひとみさんもえへらえへらと私が何をしたっていうのよ。というような顔をしながら
笑っています。

二郎さんだけが真剣な顔つきです。

私はひとみさんに再度同じ文句をつけながら、最初に指す一手を考えていました。
このまま普通に指していては負けるのはあきらかです。
一手目を指しようがないのです。

しょうがないので私は飛車を捨てて金を取りに行き、角と金で勝負をすることに決めました。
定跡を外した打ち手をすることにより、相手を混乱させ、相手のミスを誘う戦法です。
二郎さんは必ずどこかでミスをします。
そこを見逃さなければ勝てると踏んだのです。

時刻は朝10時10分
他の利用者さんの皆さんはおやつとお茶を飲み終えました。

将棋盤を通した二郎さんと私の戦いはまだ始まったばかりです。

続く・・・


久しぶりの日勤です。3

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朝からサタさんにつかまるが、他のスタッフにそのバトンを渡し、
新しい入居者さんが入る居室のチェックを終え、
二階の事務所に上がろうと思ったら今度はキヨエさんにつかまった私。
やっとそれももきりよく終わり、とうとう二階の事務所へ上がりました。

2階に上がったら履歴書が届いていたのでまずは面接の日時のアポ入れをします。
次に部下が机に上げてくれた郵便物や書類に目を通して処理します。

その日の最も重要な事務仕事は月末の支払いのチェックでした。
事務の相馬さんが作ってくれたデータを元に、
請求書の金額と銀行振込予定の金額が一致しているかをチェックします。
バッチシでした。
相馬さんもたったの3か月でずいぶん成長されました。

それから事務に関する細かい指示をいくつか相馬さんにして、
いよいよ1階の現場に入ろうかと階段を降りようとしたところ、

福祉タクシーの運ちゃんが車のことで相談がある。と来たのでそれに対応します。
福祉タクシー事業がらみの報告や相談が他にもいくつかあったので30分は使いました。

そしてとうとう1階の現場に入れる。と、
階段を下りて行ったところでまたキヨエさんにつかまりました。

キヨエさん「行ってきたのが?」
  私  「(内心。え~ここは覚えてるの!?と思いながら)はい・・・」

キヨエさん「そうが~おらだっきゃ~ホニャララホニャララ~」
  私  「あ~」

キヨエさん「ま~ホニャララホニャララ~」
  私  「・・・」

このようなやりとりがしばらく続きます。

そして彼女は言いたいことを一通り終えると、
右上方の方、遠くの方(そこには厨房があり調理員が昼食を作っています)をみて、
眠そうな顔になります。
そしてしばらくこちらに顔を向けなくなります。
まるで私がここにいることを忘れてしまったかのようです。
(たぶん実際に忘れています)

この間、約5分
時刻は朝10時ジャストです。

続く・・・